戦争の時代 上・下

著:半藤一利

発行:平凡社
発行日:2023/4/19

判型:A5縦判(210×148mm)
頁数:各304p
製版・印刷:スミ、プロセス4C、特色1C(特青)、プロセスマゼンタ+プロセスイエロー、カバー、帯はマットPP加工
用紙:オペラホワイトマックス、オーロラコート、F1カード、b7ナチュラル
製本:あじろ綴じ並製本

今回は半藤一利氏著『戦争の時代 上・下』をご紹介いたします。

「きちんと読めば、歴史は将来にたいへん大きな教訓を投げかけてくれます」。

シリーズ「半藤先生の『昭和史』で学ぶ非戦と平和」は、2021年に亡なくなられた半藤一利さんの昭和史に関する4冊の著書『昭和史1926-1945』『昭和史 戦後篇 1945-1989』『B面昭和史 1926-1945』『世界史のなかの昭和史』をそれぞれ2分冊にして全8巻にまとめ直し、若い読者にも読みやすく再編集したものです。

本書は『昭和史 1926-1945』(戦前篇)を近現代史学習の基本図書として再編集。
小学5年生以上で学習する漢字にはふりがなをふり、巻末には新たに解説と索引を追加しました。

半藤さんは昭和の戦争の結論を「300万人の死者」と書いています。
なぜ日本はあの愚かな戦争をはじめてしまったのでしょうか。

—平凡社ホームページ紹介文より

なぜ今「昭和史」を学ぶのか。昭和の激動の時代の渦に巻き込まれていった人々と同様、現代を生きる私たちも知らないうちに巻き込まれていくかもしれません。1945年の太平洋戦争敗戦によって、一度滅びたと言っても過言ではない日本国家。戦後ゼロから再スタートし、先進国の仲間入りをした日本ですが、「戦争の時代」であった昭和史前半、戦後の復興を遂げた昭和史後半を、戦争を知らない若い人たちが知り、学ぶことは、将来同じ過ちを繰り返さないために欠かせないことです。

編集者の山本明子さんの「学校ではほとんど習わなかったので昭和史のシの字も知らない私たち世代のために、手ほどき的な授業をしていただけたら、たいそう日本の明日のためになると思うのですが」という熱心な説得に、心を動かされた半藤氏は、昭和史講座のための寺子屋を開き、集った編集者たちのために毎回おしゃべりをしてものが、山本さんの尽力により本になりました。

「歴史に学べ」とはよく言いますが、半藤氏は「それを正しく、きちんと学べば」という条件のもとだと言います。本書は、語り口調で、ほぼ時系列で史実を押さえていくというオーソドックスなものですが、半藤氏の語りの力と時代の生き証人の証言によって補強されて、「時代にまるごと対面する感じ」となっています。半藤氏の解釈が押し付けられることなもなく、受け取ったものを広げ、深堀するのは読者に委ねられています。

「昭和史の語り部」半藤氏の言葉によって紡がれた本書を、小中学生のような若い人にこそ読んでいただき、過去の失敗の歴史から学び、将来に活かしていただきたいです。

モノクロ写真のカラー再現について

本シリーズのカバーでは、時代を象徴する代表的なモノクロ報道写真をフルカラーで再現。「戦争の時代」上下巻では、それぞれ二・二六事件(上巻)と真珠湾攻撃(下巻)のフルカラー写真が起用されています。

1936年、二・二六事件。集合場所の料亭「幸楽」を出発、平河方面に向かう反乱軍の兵士たち。(東京市麹町区)撮影日 1936年02月28日  登録日 2013年04月08日 ・写真=朝日新聞社/時事通信フォト、カラー再現=東京印書館

フルカラー再現後

1941年、真珠湾攻撃。日本軍の奇襲攻撃による爆撃で弾薬庫が爆発、炎上し傾く米太平洋艦隊戦艦アリゾナ(アメリカ・真珠湾)撮影日 1941年12月07日 / 登録日 2012年07月26日 ・写真=Avalon/時事通信フォト、カラー再現=東京印書館

フルカラー再現後

担当レタッチャーより

片山 雅之

Photoshopでモノクロ写真をカラーに変換する際には、Photoshop独自の癖があり、全体的にブルーが強くなる傾向がありますので、一か所ずつ当時の資料を考証、確認しながら修整を行いました。

上巻のカバー画像は二・二六事件の様子を撮影したものですが、当時の資料をかなり調べ、太平洋戦争後期の物資が不足した時代とは異なる、軍服のイエローグリーンの上等な布地の質感を再現しました。また写っている自動車は、当時非常に珍しかったトヨタAA型乗用車(国内初の乗用車)ですが、元の画像から推理して、当時一番多く出回っていたベージュブラウンにしています。当時が雪の日であること、舗装されていない道路がぬかるんでいる点なども再現しています。

下巻のカバー画像は、真珠湾攻撃の写真で非常に有名なものですが、撃沈された軍艦アリゾナは明るいグレーの塗装が煤けている様子を再現。モクモクと立ち上がる煙は、重油が燃えているものなので黒くし、内部の火炎を表す赤い光の反射を強調して製版いたしました。

個人的な思いとして、半藤先生の著書なので、歴史的事実に忠実でありたい、そのために時代考証を入念に行いました。

編集協力:山本明子
装幀:木高あすよ(株式会社平凡社地図出版)
DTP:有限会社ダイワコムズ