平山謙写真集 羽田浦写真帳

著:平山謙

構成・監修:英伸三

ブックデザイン・編集管理:滝川淳

発行:東京印書館
発行日:2023/5/1

判型:B5縦変型判(232×185mm)
頁数:148p
製版・印刷:プロセス4C、プロセスシアン+スミ、カバーはグロスニス
用紙:ユーライト、里紙 雪、ヴァンヌーボVG スノーホワイト、ハンマートーンGA スノーホワイト、OKミューズガリバーリラ ホワイトS
製本:クータバインディング製本

羽田空港で働いていたころ悪臭のしていた多摩川に清流と魚が戻っている。
早春に群れて咲くハマダイコンの花、ヨシキリの鳴く声、ユリカモメ飛ぶ冬、遊ぶ子どもの姿を見るとき、私の新潟村上の豊かな自然の中で遊んだ子供の光景と重なる。

—「ハマダイコンの花咲く水辺」著者あとがきより

写真家・平山謙氏は1947年(昭和22年)新潟県村上市生まれ。新潟県立村上高等学校、法政大学経済学部卒業。日本通運株式会社に入社し、2007年定年退職。2005年から現代写真研究所で写真を学び、英伸三氏、入江進氏、尾辻弥寿雄氏に師事、現在に至ります。2020年「視点」全国公募写真展で「長野県富倉村」が優秀賞受賞。同展でほかに3回の入選を果たしています。本書は『北信濃 飯山の四季』(2021年、信濃毎日新聞社)に続く写真集となります。

本書には、平山氏の暮らす、多摩川138キロの河口が広がる東京都大田区萩中、平山氏が「羽田浦」と呼ぶ地域を十数年撮影した写真が収められています。現在の羽田国際空港の地を、GHQによる立ち退き命令により追われ、敗戦と公害でうちのめされた人々の多くが移り住んだのが「羽田浦」です。本文でも触れられているように、かつての「どす黒い砂地も洗剤の泡立つ公害はなく」、この写真集で見られるのは、「清流と豊かな多摩川の自然」です。

平山氏が魅せられているブルーモーメント「青の時間」とは、晴れた日の夜明け前と日没後のわずかな時間帯、空が一面、青色に染まる現象です。写真集冒頭に収められた、「月出帯食」という満月が欠けたまま東の地平線から昇る月食の写真は、澄み切った青い空気の中浮かび上がる月は息をのむほど美しく、多摩川の静かな川面と大師橋、高速道路が見事なコントラストを見せています。

また、川沿いに咲く菜の花や桜、川辺で遊ぶ子どもたち、釣り人たち、ソロバンのある豆腐屋さん、野菜と魚の両方を売る店、羽田神社の夏祭り、ウグイスやユリカモメ、ここにあるのは、この地で暮らす人々の日常の光景であると同時に、私たちの周りにも通じる懐かしい光景です。江戸東京の暮らしを写した写真でありながら、私たちの郷愁を誘うものとなっています。平山氏が語るように、誰しもが自分の子ども時代を懐かしく思い出すのではないでしょうか。

「羽田浦」の自然豊かな景色、そこで暮らす人々の生活、四季のうつろいをお感じいただける写真集となっています。この写真集をご覧いただくと、このような穏やかな日常を手にしている幸せを改めてお感じいただけるのではないでしょうか。

(書影・文 東京印書館 大熊美幸)

担当プリンティングディレクターより

髙栁 昇

羽田浦に暮らす人々の日常を切り取った写真集ですので、製版する際には、過度に明るくしたり暗くしたりすることはせずに、ナチュラルな印象に仕上げました。第一に平山さんがリアリズムに重きを置く写真家であることを念頭に置いたからにほかなりません。また、少しコントラストを強調することで、より写真のリアルな印象が伝わるようにしています。

統括印刷ディレクション:髙栁昇(東京印書館)
製版ディレクション:山口雅彦、竹下真台(東京印書館)
印刷ディレクション:高橋満弘(東京印書館)
印刷進行:三浦清美(東京印書館)
地図作製:熊谷直也

平山謙写真集 羽田浦写真帳 | PRESSMAN BOOKS ご購入はこちら

発行日: 2023/5/1-判型:B5縦変型判 232×185mm-頁数:148 ページ-印刷:プロセス4Cオフセット-製本:クータバインディング-用紙:ユーライト、里紙 雪「羽田浦」の自然豊かな景色、そこで暮らす人々の生活、四季のうつろいをお感じいただける写真集。-Title: Hanedaura Shasin-Cho / Hanedaura Photo Book-Date of issue:May 1, 2023-Size: 222×185mm, 148 pages-Tone reproduction:Process 4C offset printing-Binding: Cooter Binding-Paper: Uright,Satogami YukiThis book contains photographs taken by photographer Ken Hirayama over a dozen years in the area where he lives, Haginaka, Ota-ku, Tokyo, where the mouth of the