坂本龍一編集 写真集『ラストエンペラー』

写真:バジル・パオ、アンジェロ・ノヴィ、フランク・コナー、キース・ハムシャー、ローリー・スパーム、クリストフィー・ディボアー

発行:本本堂
発売:扶桑社
発行日:1988/4/8

編集人:坂本龍一
発行人:坂本敬子

判型:AB横判(210×257mm)
頁数:176p
製版・印刷:プロセス4C、スミ、スミ+特色1C(特グレー)、特色1C(特赤、特黄)、プロセススミ+プロセスマゼンタ+プロセスイエロー+特グレー、カバーはマットPP加工
用紙:マットコート紙、アート紙
製本:あじろ綴じ並製本

先日ご逝去されました坂本龍一氏に関する大変貴重なものが、アーカイブから発見されましたのでご紹介いたします。坂本龍一氏が編集した写真集『ラストエンペラー』です。発行元の本本堂は、1984年から1989年まで活動していた坂本龍一氏の個人出版社で、本書は当社が印刷を担当し、1988年に刊行されました。

ベルナルド・ベルトルッチ監督・脚本の映画『ラストエンペラー』は、1987年の第60回アカデミー賞において、作品賞、監督賞、撮影賞、脚色賞、編集賞、録音賞、衣裳デザイン賞、美術賞、作曲賞の9部門を受賞。坂本龍一氏は日本人として初めて作曲賞を受賞し、同曲でゴールデングローブ賞、1989年第31回グラミー賞最優秀オリジナル映画音楽アルバム賞など世界的な音楽賞を総なめにしました。

音楽活動以外でも、出版や俳優活動、はてはダウンタウンとのコントまで、意外な一面をお持ちだった”教授”。本書は自ら編集した『ラストエンペラー』の魅力を余すことなく伝える写真集です。ベルトルッチ監督やスタッフ、キャストのジョン・ローン、ジョアン・チェン、ピーター・オトゥール、坂本氏自身のインタビューを豊富な写真とともに紹介。美しいセットや衣装、名シーンの舞台裏、多くのエキストラの方々の魅力的な瞬間にも迫るものとなっています。

映画では悲劇的な末路をたどっていく満州国と日本軍、それを取り巻く人々の人間模様が、”最後の皇帝”愛新覚羅溥儀を主人公に据えて壮大なスケールでドラマチックに描かれています。坂本氏が演じた甘粕正彦は関東軍の大尉、満州国の奉天で情報・謀略工作をした人物。史実とは異なる部分はもちろんありますが、破滅に向かって突き進んでいく陰のある役柄を蠱惑的に演じられていたのが印象に残っています。

印刷には、当時としてはまだ珍しかった、スミとグレーのダブルトーンが使用されています。こちらの写真集は残念ながら、現在は絶版となっておりますが、古書店などで発見された際にはぜひお手に取ってご覧ください。坂本氏の新たな作品を観たり聴いたりすることはもう叶いませんが、その名作は永遠に遺ります。『ラストエンペラー』もまだご覧になっていない方にも、ぜひご覧いただきたい名作です。坂本氏のご冥福を心よりお祈り申し上げます。