莫毅 MOYI 1983-89

写真:莫毅(モ・イ)

発行:禪フォトギャラリー
発行日:2016/4/8

判型:A5横変型判(148×210mm)
頁数:144p
製版・印刷:特色2C(スーパーブラック+特グレー)、特色2C(スーパーブラック+特グレー)+超被膜GWニス、プロセス4C+超被膜GWニス
用紙:ニューVマット、アラベール ナチュラル、アラベール ホワイト、モダンクラフト
製本:糸かがり上製本

今回ご紹介するのは、2016年刊行、莫毅氏の写真集『莫毅 MOYI 1983-89』です。

この写真集は禅フォトギャラリーにて開催された中国人写真家・莫毅写真展「80年代 Part1:父親、風景」(2015年4月7 日〜4月22日)、「80年代 Part2:莫毅 1987ー1989」(2016年4月9日〜5月11日)に併せて刊行されました。

1980年代の作品を中心に、最初期の「風景」「父親」シリーズや、「騒動(別名:我虛幻的城市)」、代表作「1m,我身後的風景」、「搖蕩的車廂」から123点を収録。巻末には莫毅氏、北井一夫氏、マーク・ピアソン氏によるテキストを掲載(和英中併記)。写真家として30数年のキャリア以来、初めてのオフセット印刷による写真集となりました。

代表作「1m,我身後的風景」の撮影手法について、莫氏は次のように語っています。

私は当時まだ珍しかったカメラを首の後ろの襟の部分に置き、レンズを後ろに向けた。そして5歩歩くごとに1回シャッターを切った。これは「行走的方式(歩く方法)」というパフォーマンスアートで、そうして撮った写真から「1m、後ろの風景」のシリーズができた。

この方法によって、前後の人とほとんど距離がない人ごみの中で、まるで自分の前には空気しかないというほど自然体の人か、あるいは不可解な表情を浮かべている人を撮ることができた。彼らは「なぜカメラをそんなふうにして見せびらかしているのか」と考えていたのかもしれない。その疑いの目は、ずべての社会の信仰が破滅した表情そのものだった。

「1m、後ろの風景」は被写体を記録した作品であると同時に、被写体に自分のパフォーマンスがうつり込んだ作品でもある。憂鬱で孤独な、「究極に陰、且つ陽」な天安門事件発生前の社会が、どの写真からも洩れて見える。作品中の自分撮りは、私もその憂鬱な空気の中の一人だったことを表しているのだと思う。

ー莫毅 2016年3月 本文あとがきより

この写真集に収められた1983年~89年の6年間の作品でも、先に述べた「行走的方式」以外にも、莫氏の手法やパースペクティブの変遷をご覧いただけるでしょう。また莫氏が語るような、天安門事発生前の中国を覆っていた「憂鬱で孤独な、『究極に陰、且つ陽』」な空気感や、その閉塞感をどこにもぶつけることのできない苛立ちや憤怒の念も伝わってくるのではないでしょうか。

これらの写真が撮影された年から、大きく時は流れ、経済大国へと成長を遂げた中国は今なお変容し続けています。そして莫氏は、写真という回路をもちいて自らの身体的感覚と深く結びついた表現を模索し、今も「変わりゆく中国」をとらえようとしているように見えます。現代美術にもつながる莫氏の実験的試みと、そこに映された中国の現実を感じ取れる写真集です。ぜひご覧ください。

編集&アートディレクション:羅苓寧(アマンダ)
翻訳:石塚陽介、小出彩子、邱德怡、羅苓寧
英語校閲:マーク・ピアソン
中国語校閲:李威儀

莫毅 1983-89 – 莫毅 | shashasha 写々者 – 日本とアジアの写真を世界へ

この写真集は禅フォトギャラリーにて開催する中国人写真家・莫毅写真展「80年代 Part1:父親、風景」(2015年4月7 日〜4月22日)、「80年代 Part2:莫毅 1987ー1989」(2016年4月9日〜5月11日)に併せて刊行され…