田代竜一写真集 ブルーにこんがらがって

写真・著:田代竜一

発行日:2022/9/22

判型:A4縦変型判(260×215mm)
頁数:160p
製版・印刷:CMYブロードインク+スミ
用紙:雷鳥ダルアートCOC、タンタンピース650-01、テンカラ― 銀鼠
製本:糸かがり上製本、クロス装、箔押し

今回は、写真家・田代竜一氏の写真集『ブルーにこんがらがって』をご紹介いたします。

何処か旅に出て、写真を撮ろうと思ったのは1975年が過ぎたあたりだったのか。

世は旅のキャンペーン「ディスカバー・ジャパン」の写真で溢れ、外国モノの、洒落た詩的な風景写真や、エキセントリックなヌード写真で氾濫していた。
そんなものに飽き飽きしていた自分は、北から南へ遊業の地を巡り、キッチュでポップな絵葉書風に仕立てて写真を撮っていた。

ところが目の前を通り過ぎる現実の光景は、幻想的で奇異であり、突飛な姿で登場して来る人、妖艶で素敵な人が続々と眼前に現れてくるのだ。陶酔しながら夢見心地でシャッターを押しつづけた。それらはもう一つの世界・異界へと導いてくれたような気がする。

写真はその感覚を呼び起こす最適なメディアだと改めて思った。

ーあとがきより

田代竜一氏は1948年東京都亀戸出身。日本大学法学部中退ののち、アテネ・フランセに通い、グルノーブルでもフランス語を学びます。その後東京綜合写真専門学校を卒業。1970年代後半、「カメラ毎日」で写真を発表していましたが、1980年1月号の「いい日旅立ち」と題するカラー写真発表から、写真の世界から姿を消していました。

2022年、長い長い沈黙を破って発表された『ブルーにこんがらがって』は、田代竜一氏の初の写真集となります。タイトルはボブ・ディランの名曲「ブルーにこんがらがって」から。ディランはこの曲を「10年の人生を、2年かけて書き上げた曲」と語ったことがありますが、田代氏のこの写真集も70年代からのライフワークをまとめ上げた傑作となっています。

1970年代、森山大道、中平卓馬、須田一成などの一流の写真家がモノクロでのストリートスナップを撮影していたのに対し、田代氏は早々にカラーでストリートスナップの撮影をスタートします。田代氏は、「当時、カラーでの撮影の方が、作為がない写真が撮れるような気がしたからだ」と語っています。

この「作為がない」田代氏の写真は、撮影対象に余計な私情を挟むことなく、一定の距離感をとりながら、かといって突き放すこともなく、時にユーモラスでコミカルな市井の人々の表情をいきいきととらえています。また、田代氏一流のクールな視点で撮影されたこの写真集では、日常と非日常、時代を行ったり来たりする感覚を味わうことができます。それは素敵に「こんがらがって」います。

愛すべき市井の人々の姿を眺めながらクスリと微笑まずにはいられない写真集です。ぜひご覧ください。

また、この写真集は、下部リンクよりお求めいただけます。

担当プリンティングディレクターより

髙栁 昇

写真(RGBデータ)は非常に彩度が高く、特にブルーの色の彩度には写真家田代氏のこだわりがありました。

通常のプロセスインキではこの彩度は再現できないため、4色ともに広色域で彩度が高いブロードインキを使用。暗部(黒部)の面積の多い写真は色味を出すような製版をし、印刷はインキを盛り込み、ボリューム感を出しています。

題字:日賀野充
テキスト:中川道夫
フォトレタッチ:大倉将則
編集:池谷修一
ブックデザイン:宮添浩司
翻訳:丸山京子

ブルーにこんがらがって Tangled Up in Blue / 田代竜一 Ryuichi Tashiro | PRESSMAN BOOKS