田中長徳写真集 TODAY TOKYO

著者:田中長徳

発行:禅フォトギャラリー/Zen Foto Gallery
発行日:2022/4/27

判型:B5縦変型判(200×200mm)
頁数:132p
製版・印刷:特色2C(コンクスミ+特グレー)+超被膜グロスウェットニス、特色3C(コンクスミ+特グレー+特赤)、表紙はグロスPP加工
用紙:b7トラネクスト、OKトップコート+、タント S-3
製本:糸かがり上製本

今回は、写真家・田中長徳氏の写真集『TODAY TOKYO』をご紹介いたします。

写真家でカメラ評論家でもある田中長徳が1960年代から1970年代にかけての東京を活写した、極めて初期の作品を集めた写真集。小学生の時に初めて一眼レフカメラを手にした田中長徳にとって、高度経済成長期に入りエポックメイキングな出来事が続くこの時代の東京は格好の被写体であった。日常と非日常、光と影という相反する顔を持つ東京の街を田中は独自の視点で軽快にスナップショットで切り取っている。

「私が東京をテーマとして認識できるようになったのは、1964年の東京オリンピックの時だった。東京が初めて極東の敗戦国の首都ではなくて、極東の活発な都会として認識されたきっかけが1964年だった。その時私はニコンとライカを手にして東京の撮影を開始した。この写真集に収録されているのは私が撮影した半世紀の時間軸のごく初期の、つまり1960年代から70年代初めの写真からセレクトした。」
― 田中長徳 (Zen Foto Gallery ホームページより)

写真家・田中長徳氏は、1947年東京生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。大学在学中の1969年、銀座ニコンサロンにて当時史上最年少で個展「TODAY TOKYO」を開催。

1973年から7年間ウィーンに住み、その後MOMA(ニューヨーク近代美術舘)にて1年間アメリカの現代写真を研究し、さらにプラハで30年滞在して、精力的に写真家として活動。カメラにも造詣が深くカメラ評論も多数執筆、ライカブーム、クラシックカメラブームの火付け役となりました。

この写真集『TODAY TOKYO』は、田中氏の初めての個展と同タイトルであり、1960年代から70年初めの写真でからセレクトしたもので、禅フォトギャラリーオーナーのプリントコレクションから構成されています。

およそ半世紀前のこれらの写真に写っているのは、古き良き東京の街並み、市井の暮らし、抱っこ人形を負ぶった幼女、マリリン・モンローやマクドナルドなど欧米から流入する文化の影響を受けた若者たちなど東京オリンピック開催に向けて急速に発展していく陽の部分、一方で当時盛んであった学生運動、三億円事件の犯人の指名手配写真、米兵の姿など陰の部分が織り交ざっています。

田中氏の写真方法論はウィリアム・クライン、ロバート・フランク、エルスケンに教えを受けた「ストレート・フォトグラフィー」です。

クラインは「被写体なしでは成立しない写真において、被写体が主役ではなく、撮影のために被写体がある」と語っていますが、その方法論は田中氏のこの写真集でも忠実に実践されており、撮影者の主観が徹底的に排除され、人間の目に映ったままの光景を機械的に写し撮っています。

しかしながら写真家の目を通して写し撮られた写真を見る我々は、今はすべて失われてしまった光景に対するノスタルジックな感情が喚起されるのではないでしょうか。それらは ”かつて” ”ここに” ”あった” からです。

本写真集の印刷にあたり、インキには濃いスミとグレーのWトーンで暗部のブラックを引き締めながら諧調表現を豊かにし、絵柄には超被膜グロスウェットニスを使用して、銀塩プリント特有の雰囲気を再現しています。

かつての東京の姿をありのままに活写し、現代に生きる私たちの感情を揺さぶる写真集です。ぜひご覧ください。

アートディレクション:柿沼充弘[Raven & Persimmon Studio]
プロジェクトマネジメント・翻訳:マ ボンワイ ボニー
プロジェクトアドバイジング高橋国博

Today Tokyo – 田中長徳 | ZEN FOTO GALLERY – アジア諸国の写真を専門に紹介するギャラリー・出版社

写真家でカメラ評論家でもある田中長徳が1960年代から1970年代にかけての東京を活写した、極めて初期の作品を集めた写真集。小学生の時に初めて一眼レフカメラを手にした田中長徳にとって、高度経済成長期に入りエポックメイキングな出来事が続くこの時代の東京は格好の被写体であった。日常と非日常、光と影という相反する顔を持つ東京の街を田中は独自の視点で軽快にスナップショットで切り取っている。 …