金指栄一写真集「在所の譜」

発行日:2024/02/4

著者:金指栄一
編集構成:雨宮ゆき
アートディレクション:滝川淳
統括プリンティングディレクション:
髙栁昇
発行所:株式会社 東京印書館

判型:B5縦正寸判(257×182mm)
頁数:146p
製版・印刷:〈本文〉特スミ+特グレー(ダブルトーン+ニス)〈カバー〉プロセス4C+グロスニス〈表紙〉特茶IC (DIC333)〈表紙〉特紫IC (DIC491)
用紙:〈本文〉ニューVマット〈表紙〉ハンマートーンGA しろねず(=スモークホワイト)〈カバー〉ヴァンヌーボVG スノーホワイト〈見返し〉タントP-53(肌色)
製本:無線PUR並製本(クータバインディング)

写真集「在所の譜」は、写真家金指栄一氏が2015年から2019年までの5年間、横浜市鶴見区内で撮影した写真を中心に纏められています。2015年、健康上の理由から、自宅のある鶴見区駒岡から主治医のいるJR鶴見駅周辺までの間に活動範囲が限定されることになった金指氏。市営バスで20分程度の範囲は氏にとっての「在所」(居場所)になったと氏は語ります。

病と生きる日々の折、氏が撮影したのは、元気な時には通り過ぎていたという近所の和菓子屋、寿司屋、うなぎ屋、床屋など、代々家族で営まれてきた昔ながらの店の人々であり、今なお生活の中で息づく伝統文化が受け継がれていく姿でした。

撮影したのは、和菓子屋、寿司屋、うなぎ屋、床屋など家族で営む店でした。そこは和の味と技を身近に楽しみながら、安らかに過ごせる場所でした。店は、その一つ一つが味わい深い「譜」のように思われ、時代の文化の記録として撮り続けることにしました。

ーはじめに より

写真集には、これらの店の日常とそこで働く人々の人生がいきいきと描かれています。例えば、168歳の和菓子店「若葉」で丹念に捉えられている和菓子職人の細やかな技や、百年もののタレと甕を今でも使い続けるうなぎ店の家族。そして、近所の子供たちが寿司屋の大将に学び、恵方巻き作りに挑戦する姿や親子4代で糯搗きに勤しむ家族の写真からは、代々受け継がれてきた食文化や伝統が今なお共同体の中で若い世代に継承されている様子がありありと伝わってきます。



また、氏はこのように伝統文化を受け継ぎ、次世代につなげようとしている多くの店が、安価な量販店との厳しい競争に晒されていることにも言及しています。市場原理や再開発により、地域の人々の拠り所であり、伝統文化の担い手でもあるこうした家族経営のお店が、今日においてより厳しい状況に直面していることは想像に難くありません。

写真集「在所の譜」からは、共同体の中で育まれてきた文化を次世代に継承しようとする人々の努力と日常、人間関係の豊さといったものがひしひしと伝わってきます。それは、私たちがこれからも大切に受け止め、後世に伝え残していかなければならない価値であることを再認識させてくれるのです。

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B5縦正寸判 146ページ 2,200円(税込)