記録56号  森山大道

発行日:2024/2/29

著者:森山大道

発行:Akio Nagasawa Publishing
制作:長澤章生
翻訳:アンドレアス・ステュルマン

判型:A4縦変型判(280×210mm)
頁数:120p
製版・印刷:スミ+特グレー
用紙:ミューコートEX、NW(ノーバックW)
製本:あじろ綴じ並製本

今回ご紹介するのは、森山大道氏の私家版写真集『記録 第56号』。森山氏のライフワーク写真誌ともいえる、『記録』シリーズの最新作です。

今回の記録の舞台は横須賀。かつて軍港として栄え、今なおさまざまな人々が街路を行き交う傍らで、大通りを外れてみれば、昔懐かしい飲み屋が軒を連ねる裏通りにたどり着く。そんな横須賀の今に、大道氏は「つまらなさ」を感じると語ります。

かつて日夜のごとく撮し回っていた、あの、あまりにも横須賀を代表する「ドブ川通り」の様相が、
いまのぼくにとっては全くつまらなくなってしまったのだ。

(中略)

60年前にぼくがウロチョロしながら、これこそヨコスカ!と思い込んでいたあのヨコスカ風景を今更思ってみたところで栓ない話しだが、
あの一種異様な夜の光景、オンリーさん達が肩で風を切っていた夕暮れの街景は一体何処へ消えてしまったのだろうかとつい思ってしまうのだ。
言うまでもなく、時代、年代、世代は当然のことと思う他ないし、その通りだとも思うのだけど。
-あとがきより

モノクロで、明暗部のコントラストが強い紙面でありながら、暗部のディティールを繊細に映し出す作品群。写し出されている人々も実に多様で、その服装や関係性から、彼らにどのようなバックストーリーがあるのかを想起せずにはいられません。

シャッターを通して、森山氏はその感性で、現在の横須賀に何を見るのか。変容していく街並みや人々と、それゆえに見えてくるかつての横須賀の面影の双方を堪能できる魅力的な一冊となっています。

記録56号 – 森山大道 | AKIO NAGASAWA

京浜急行・横須賀駅前通りを渡って一寸奥に入った一帯に「若松マーケット」と称せられる昭和も懐かしき飲み屋街の一画がある。 ぼくはいま、一寸他用もあって足繁く横須賀の街路を歩いているが、数年前に「記録」…