山崎豊三作品集 あくがれ

著:山崎豊三

発行:求龍堂
発行日:2023/4/28

判型:A5縦判(210×148mm)
頁数:128p
製版・印刷:プロセス4C、特色1C(特グレー)、カバー、帯、表紙はグロスニス
用紙:b7トラネクスト、MTA+-FS、ホワイトピーチケント
製本:無線綴じPUR製本

今回は『山崎豊三作品集 あくがれ』をご紹介いたします。「自分は百姓です」と言いながら、空を見、土を耕し、自然と自身のあわいを形にする彫刻家・山崎豊三の初の作品集。


山崎豊三氏は、1955年長野県安曇郡豊科町(現安曇野市豊科)生まれ。1977年東京造形大学美術学部彫刻専攻卒業。安曇野市豊科在住。

和泉式部は「もの思へば沢の蛍も我が身よりあくがれいづる魂かとぞ見る」と詠い、源氏物語の六条の御息所の魂はあくがれ出でて葵の上を苦しめるのである。
(中略)
和泉式部の意識は、沢の蛍を、あくがれ出てしまった自分の魂かと観察し、御息所は自分の意識が戻って魂があくがれ出てしまっていたのだと気付き驚くのである。
そのような魂が体から離れてしまうことを「あくがれる」と言うのである。

(中略)
ところで、「物作り」を考えるときに、この文化においてはその行為全般が、この「あくがれ」なのではないかと思う。
私たちは、何かを作ったり何かをしたりするときに、よく「心を込めて」とか「魂を込めて」とか言う。それは、「誠心誠意」といったほどの意味な訳だが、これをそう表現するのは、魂はあくがれる或いは、あくがれ易いものである、魂はきっかけさえあれば容易に体を離れ他者に憑依するといった思いや気分を人々が共有していたからだと思われる。

(中略)
空気は、まだ昼間の暖かさの余韻を残しているし、しかし、昼間よりはしっとりとして私の肌にまとわりついてくる。好ましい軟らかさと湿り気となった大気の中へ私の中の何かが、溶け出していくのである。気分は実にエロティックになっている。あらゆる物が境目を持たなくなって、その本来の体温と湿り気を持ったまま無防備な生身になって漂っているようである。もしかすると「あくがれ」の表情というのはかなりエロティックなものなのかもしれない。

ー「あくがれ」ということ より

山崎氏は、近年は紙粘土や蝋をこね、手の中に立ち上がってくる作品を主に発表しています。日々の耕作の中で身体が憶える天地と、たえまない自己への問いかけがひとつになって生まれる無口な「かたまり」たち。身体が土の表面を這うときに覚える土の感触、皮膚にまとわりついてくる土との間の、肉体的或いは物質的な交歓と悦楽を、その指先はしっかりと覚えていて、ぼんやりと不可思議な幸福感を思い返し、あの気分に誠実でありたいと思いながら塑造に向き合っています。

今回の作品集には、彫刻のほか、絵画・版画、山崎氏自身の文章も多数収録されており、山崎氏の世界観をさまざまな角度から堪能できるものとなっています。本書はギャラリー川船、求龍堂オンラインストアで好評予約受付中です。ぜひご覧ください。

担当プリンティングディレクターより

細野 仁

ギャラリー川船の展覧会で現物を拝見し、全体的に重厚感を出してほしいというご要望に沿ったディレクションをいたしました。蜜蝋と紙粘土、ブロンズの作品については、その重さを表現するために、色味を濃くしてボリュームを持たせつつ、細部のディテールを出す製版をしています。版画や絵画については、細い線が潰れないように配慮いたしました。背景の地の色は揃えて、作品集トータルでご覧いただいた際の統一感を出しています。

寄稿:峯村敏明(美術評論家)、小川稔(美術史家)
編集:
三宅奈穂美(求龍堂)
デザイン:
近藤正之(求龍堂)
撮影協力:
MGMフォートサービス

監修:川舩敬
編集協力:西村久子(ギャラリー川船)、込宮麻衣(ギャラリー川船)

『山崎 豊三 作品集』 2023年3月出版予定

この度、山崎豊三の制作を辿る作品集を求龍堂より刊行することとなりました。1980年代のブロンズから現在の塑像に至るまでの作品、絵画などを収録いたします。発売は来年2023年3月を予定しております。詳細は決まり次第お知らせいたしますが、発売に先立ちまして、ご購入希望の方はご予約を承ります。氏名、住所、電話番号、FAX、メールアドレス、購入希望冊数をギャラリー川船までご連絡下さい。 …

山崎豊三作品集 あくがれ-求龍堂オンラインストア

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