アニマル・スタディーズ 29の基本概念

編:ローリー・グルーエン

監訳:大橋洋一

装幀:岡本洋平(岡本デザイン室)

発行:平凡社
発行日:2023/2/24

判型:A5縦判(210×148mm)
頁数:806p
製版・印刷:プロセス4C+マットニス、特色1C(特紫)、特色1C(特紺)+スミ、スミ
用紙:オペラクリアマックス、OKミューズガリバーリラ ホワイトS、テイクGA-FS、ヴァンヌーボスムース スノーホワイト
製本:あじろ綴じ上製本

今回ご紹介するのは、ローリー・グルーエン氏・編、大橋洋一氏・監訳『アニマル・スタディーズ 29の基本概念』です。

〈アニマル・スタディーズ〉とは、「人間と動物との関係を再構築し改革する学術分野」のことで、自然科学系・社会科学系・人文科学系の共同・連携プロジェクトです。本書は、学術的研究であると同時に社会的・文化的・政治的活動でもあり、研究と活動、理論と実践、さらには学問研究と日常生活が交差する〈アニマル・スタディーズ〉の最前線から、様々な動物的視座と思考の方法を提示する必読必携の書。

動物的視座は、人間の文化・社会・歴史・政治を考える上で不可欠であり、人間とは何かという哲学的な問いから、身近な倫理問題や未来の環境問題、食糧問題とも関連しています。人間社会が行き詰まる中、ポストヒューマンの世界は、AIの動向や展開を中心に語られることが多いですが、一方で動物的視座による世界観の転換や改革も未来には欠かすことができないと提唱しています。

29の基本概念は「絶滅」「痛み」「人間性」「権利」「ヴィーガン」など、従来の人間中心の世界観を解体し、未来の変革を目指す上で不可欠な〈アニマル・スタディーズ〉の様々な視座と思考の方法が示されています。

806ページと辞書のような大ボリューム。もちろん1冊を通してお読みになることが、〈アニマル・スタディーズ〉の全体像を把握するのに最もお勧めですが、29の章はそれぞれ単独の論考となっていますので、興味のあるテーマから読み進めても〈アニマル・スタディーズ〉の具体的なイメージを理解することができます。

カバーに使用されているOKミューズガリバーリラは、竪琴をイメージしたやわらかな雰囲気のある紙で、流れ目に平行して細いライン柄があり、凹凸感のある手触りと繊細な印象をお楽しみいただけます。今回はプロセス4C+マットニスで印刷し、スタイリッシュで重厚感のデザインが活かされており、書棚でも一際存在感を放つ1冊です。

ポストヒューマンの世界に向け、脱人間中心主義の現在と未来について考えさせられる良書です。ぜひご一読ください。