中平卓馬写真集 「Documentary」

著者:中平卓馬

デザイン:中島浩
協力:オシリス

発行日:2011/1/8
発行:Akio Nagasawa Publishing
判型:A4縦変型判(300×201mm)
頁数:128頁
用紙:サテン金藤
製版・印刷:プロセス4C、表紙はグロスPP加工
製本:糸かがり上製製本

今回は2011年に刊行されました、中平卓馬さんの写真集「Documentary」をご紹介させていただきます。

中平卓馬氏は、雑誌編集者を経て、東松照明氏と出会ったことを契機に写真を撮り始めます。68~70年に多木浩二氏、高梨豊氏、岡田隆彦氏、森山大道氏とともに写真同人誌「プロヴォーク」を刊行。

この時代はいわゆる「アレ、ボケ、ブレ(荒い画面、手ブレや被写体のブレ、ピント外れ)」の作風でしたが、73年発表の映像論集「なぜ、植物図鑑か」では今までの作風を否定し、以降は徹底的に撮影者の心象を排除したカタログや図鑑のような写真を指向するようになります。

77年に病に倒れ一時記憶を失いますが、その後も「植物図鑑」のような写真を撮ろうと試行錯誤したそうです。2011年発表のこの写真集「Documentary」では、そのスタイルが完全に確立(90年代には100ミリレンズにより、縦位置&カラーに固定されたようです)され、あらゆる情緒も意味も排除した単なる「モノ、ヒト」として、我々の眼前に現れます。

ページを眺めていくと、アヒル、燃える竹の幹、観葉植物の葉、道の案内板、帽子を被った男性…と脈絡のない写真の連続が続きます。そこには中平氏の私情はまったく挟み込まれず、客観的な観察者としての視点のみがあります。

私たちもそこに意味やあるいは感情の揺れなどを見出すことはなく、ただ「モノ」を「モノ」としてとらえる「写真の力」をまざまざと見せつけられるのです。

プリンティングディレクターは、今回の写真を最初に拝見した印象として「カメラを初めて手にした童のよう」に感じたとのことで、用紙の印刷適性は考慮しつつも、あくまでも奇をてらうことなく「写真」のままに表現するよう、製版、印刷しています。

Akio Nagasawa Galleryでこの写真展が開催された際、中平氏は「嬉しい」とおっしゃって毎日会場にいらっしゃったとも伺っています。

2015年にお亡くなりになる前の最後の写真集でもあり、「なぜ、植物図鑑か」以降30年以上撮り続けてきた集大成とも言える作品です。一度見たら忘れられない写真ばかりですので、ぜひ皆様の記憶にもとどめていただきたいです。

中平卓馬 / Documentary, Takuma Nakahira | PRESSMAN BOOKS

出版社/Publisher:Akio Nagasawa Publishing-判型/Size:310 x 212 mm-製本/binding: 糸かがり上製本/hard cover-発行/issued:2011本文用紙:サテン金藤製版:プロセス4カラー