牧野富太郎 植物博士の人生図鑑

植物図と言葉:牧野富太郎

執筆:大場秀章、田中純子

発行:平凡社
発行日:2017/11/24

判型:B5縦判(217×166mm)
頁数:128p
製版・印刷:プロセス4C、スミ、特色1C(特ピンク、特緑)+スミ、カバーはマットニス
用紙:HSホワイトハミング、OKミューズガリバーアールCoC ホワイト、アラベール ホワイト
製本:あじろ綴じ並製本

今回は、2017年刊行の『牧野富太郎 植物博士の人生図鑑』をご紹介いたします。
小学校中退でありながら理学博士の学位を得て、多数の新種を発見し命名を行った「日本の植物学の父」。ビジュアル版自叙伝の決定版です。

2023年度前期のNHKの朝ドラ『らんまん』の主人公のモデル牧野富太郎は、1862年幕末の土佐国(現高知県佐川町)で、豪商の跡取りとして生まれました。現代で言うなら、最終学歴は小学校中退なのですが、植物に対する並々ならぬ情熱を持ち、東京帝国大学(現東京大学)の植物学教室の門をたたくと、助手として出入りを許されるようになります。

富太郎は精力的に研究に励み、新種を発見、命名しますが、そのために郷里の財産を使い果たしたり、借金を重ね困窮したり、富太郎の活躍に嫉妬する教授たちから罷免されそうになったり困難の連続です。しかし本人は「どうにかなるろう(高知弁でどうにかなるだろう)」の精神で、いたって幸福に研究に没頭していきます。

その94年の生涯で50万点ともいわれる標本や観察記録を残し、1940年(なんと78歳!の時)には研究の集大成となる『牧野日本植物図鑑』を刊行。この図鑑は、現在も研究者や植物収集家の方に親しまれています。

本書ではそんな「幸福な男」牧野富太郎の人生が、牧野が残した豊かな言葉とスケッチ、多数の写真で綴られています。屈託なく笑う牧野博士の写真からは、その優しい人柄を伺うことができますし、13人もの子どもと貧乏学者の一家を内助の功で支えた妻・壽衛が亡くなった際、新種の笹に「すえこざさ」と命名したエピソードなどは胸を打つものがあります。

あなた方も花を眺めるだけ、匂いをかぐだけにとどまらず、好晴の日郊外に出ていろいろな植物を採集し、美しい花の中にかくされた複雑な神秘の姿を研究していただきたいと思います。そこには幾多の歓喜と、珍しい発見とがあって、あなた方の若い日の生活に数々の美しい夢を贈物とすることでありましょう。(本書58ページより)

ただただ植物を愛した牧野富太郎の生涯、そのおおらかな人柄や家族との絆、研究への情熱などが、私たちにも元気を与えてくれる本書。朝ドラ開始前に予習していただくのもおすすめです。ぜひご一読ください。

撮影:大屋孝雄
装幀・レイアウト:熊谷智子
校正:栗原功
編集:和田絹子、林理映子(平凡社)