木格写真集 塵/ MUGE  ASH

著:木格 Muge

編集・アートディレクション羅苓寧 Amanda Ling-Ning Lo

発行:禅フォトギャラリー/木格堂
発行日:2019/9/10

判型:A4縦変型判(273×217mm)
頁数:136p
製版・印刷:特色2C(スーパーブラック+特グレー)+ニス(グロスニス、マットニス+色ニス)
用紙:OKトップコートマットN、ビオトープGA-FS ストーングレー
製本:無線綴じPURオープンバック製本、箔押し、片観音

今回ご紹介するのは、2019年刊行、中国・重慶出身の写真家、木格氏の写真集『塵』です。

木格は2005年から2010年にかけて、自身の故郷でもある重慶三峡のダムプロジェクトによって水没していく村や町の変化を追った写真シリーズ『回家』が彼の代表作として知られています。しかし2010年になり5年間に及ぶこのプロジェクトは完結し、彼は大型カメラに持ち替え再び写真を撮り始めます。

『回家』の完結、子供が生まれるなど、自身の生活の変化から生まれた視点の転換は本写真集に如実に現れています。現代中国の急激な経済成長や環境汚染などで社会が騒ぐなか、木格が発表したのは石や水、土と言ったとてもプリミティブな静物が被写体として選択されている写真群でした。今までのドキュメンタリー色の強い作風から一変して静謐で、まるで老子や禅といった中国の思想に触れている感覚に陥る作品集です。

ー文/写真の鉛筆 東方輝氏

こちらの写真集は無線綴じPURオープンバックという方法で製本されており、PURホットメルトという接着剤で本を綴じ、本文と表紙がくっつかないオープンバックにすることで、開きが良くなっています。さらに本文の用紙サイズを3種類にする階段状の特殊製本、裏表紙も片観音という非常に凝った意匠の写真集です。

静的、または動的な時間の流れの中で、万物は風化し、朽ちる、または老化し、生長します。象徴的な意味を持つ松の樹幹が本の軸心となり、階段式の特殊造本に仕上げられた写真集を横に貫いたデザインは、時間の移り変わりとともに、写真が積み重なることによって生成されていることを表現しているそうです。

「静物」「山水」「風物」の3部で構成されたこの写真集は、静謐で幽玄な世界へと私たち誘ってくれます。ぜひご覧ください。

担当プリンティングディレクターより

髙栁 昇

水墨画にも通じるような木格氏の写真の雰囲気を表現するため、インキは特に濃いスミのスーパーブラック、グレーは濃いグレーを使用し、濃淡を出し暗部はしっかりと締めています。また、1~48ページ、89~132ページまではグロスニス、49~88ページまでは色ニス+マットニスとニスの種類を変え、色と質感に微妙な変化を加えています。

塵(新装版) – 木格 | shashasha 写々者 – 日本とアジアの写真を世界へ

『塵』がここで示しているのは灰燼。「生命の輪廻では、全ては元来た場所へ回帰し、魂は魂をくださった神へと戻る。」 …