古琉球の王宮儀礼とおもろさうし

著:真喜志瑤子

装幀:間村俊一

DTP:矢部竜二

発行:平凡社
発行日:2023/1/25

判型:B6縦変型判(188×128mm)
頁数:528p
製版・印刷:、特グレー+マットスミ、マットスミ
用紙:ソリストSP(N)、OKミューズコットン しろ、OKカイゼル わかくさ、バフン紙N ねずみ、バフン紙N きぬ
製本:あじろ綴じ上製本

今回ご紹介するのは、真喜志瑤子氏著『古琉球の王宮儀礼とおもろさうし』です。古琉球王朝によって編纂された歌謡集『おもろさうし』は何をうたうのか?

伊波普猷、仲原善忠などの先行研究を引き継ぎ、久米島討伐の敗者を「イベ」として祀る官人「ヒキ」の役割に着目しつつ、聞得大君、神女、キンマモンといったキーワードを手がかりに、古琉球の王宮儀礼の実態とその背景を解き明かす意欲的な試み。

本書がとりあげるのは、尚真王(在位1477~1526年)による、久米島・八重山征伐や、次の尚清王(在位1527~1555年)の大島征伐によって版図を広げ、中央集権的な統治が完成し、官人組織「ヒキ」や、祭祀儀礼制度が整い、首里城の聖域、首里森・真玉森のある「京の内」が整備されたといわれる時代の、主に、王宮の祭祀儀礼の実態と祭祀歌謡オモロにかかわり、オモロにうたわれた人びとと、その周辺のさまざまな事柄である。

王府による討伐という、政治的な事件の影響により成立し実施された、古琉球期の王宮儀礼、とくに稲祭や五穀の祭りミシキヨマそのほかの貢納儀礼、その一部としての儀礼歌としてのオモロは一体何をうたうのか、オモロ解釈の基礎的問題を検討したうえで、従来説とは視点を変え、久米島討伐が王宮儀礼とオモロに与えた影響を考える。

久米島のイベを祀る者たちが、ヒキ官人として主要な王宮儀礼を行ったこと、かれらをうたうオモロが『おもろさうし』の主要部分を占めていることを推定する。これらの考察を通して、敬遠されがちなオモロ研究の風通しをよくすることに役立ちたい。
――本書「はしがき」より

オモロ研究は、明治時代に本格的な研究が始まったばかりの若い学問であるため、長い歴史をもつ、万葉集や記紀歌謡研究などと比較することはできませんが、本書では確かな史料、根本史料により、古琉球の王宮儀礼、儀礼の一部としてのオモロの実態を明らかにする試みがなされています。記紀歌謡や神楽歌、催馬楽などとの類似性、古代の口承レベルの表現の特質、言い換え、反復などの原初的な特徴が共通している点にも着目しています。

真喜志氏の亡き父、歴史学者・石母田正氏の「おもろさうし」への遺志を引き継ぎ、諸先学の後学に託された課題や、父・石母田氏が口にしていた疑問について、真喜志氏が真摯に取り組みこたえようと情熱を注いだ本です。ぜひご一読ください。