有元伸也写真集 TOKYO STRUT

著者:有元伸也

発行:禅フォトギャラリー
発行日:2022/6/21

判型:A5縦変型判(200×200mm)
頁数:168p
製版・印刷:特色4C(特スミ+特グレー+特青+特黄)、特色3C(特スミ+特グレー+特銀)、特色2C(特スミ+特グレー)、特色1C(特銀)、絵柄ニス、表紙はJスクラッチ加工
用紙:b7トラネクスト、OKトップコート+、タント N-57
製本:糸かがり上製本

今回は、写真家・有元伸也さんの写真集『TOKYO STRUT』をご紹介いたします。

有元伸也氏は、1971年に大阪生まれ、1994年ビジュアルアーツ専門学校大阪を卒業。写真家として活動を始め、中国、インド、ネパールの国境に拡がるチベット文化圏を巡り、人物のポートレイトを撮り続けてきました。初期の代表作である写真集『西藏より肖像』は、撮影者(=有元さん)に対する親和的感情や好奇心が伝わるチベットの人々の表情をとらえ、第35回太陽賞を受賞するなど高い評価を受けました。

今回新たに刊行される写真集『TOKYO STRUT』は、2016年以降の東京の路上で撮影された作品と、平成最後の日と令和最初の日という2日間を撮影した作品で構成されています。

僕は写真を撮っている。「写真家」とか「アーティスト」とか名乗ってみれば聞こえは良いが、正直それで食えてるわけでもなく、偏屈な性格から世渡りを上手くできない現状もある。幼少の頃から人と同じことができない自分を欠陥人間だと思っていたし、そう思わざるを得ない世間の風潮を過敏に感じていた。協調性や空気を読むことが尊ばれる世の中に於いてはどうにも生きにくい性格だ。……

それでも自分を信じて堂々と生きたい欲求があり、それを見事に体現しているような人たちに出会うと心の底から嬉しくなり、リスペクトとシンパシーを持って撮影する。厳格なテーマなんかもないので、ほとんどのカットにおいて、絞りとシャッタースピードは固定。フォーカス位置も目測、ノーファインダーでシャッターを押している。

現像した写真を見ると、当然ながら構図は不安定、ピントも曖昧で人物の顔が途切れているカットなんかも多々ある。たとえそれが失敗だとしても気にしない。「ハッピーでラッキー」という単純明快な言葉を唱えながらズンズン進む。そうすることで過去の呪縛から開放され、より自分らしく振る舞うことが出来るようにと。

——有元伸也(写真集『TOKYO STRUT』より)

この写真集のタイトル『TOKYO STRUT』は、1975年発表の大滝詠一氏の楽曲『福生ストラット(part2)』をオマージュして付けられたそうで、同じフレーズを繰り返す、ニューオリンズ調の軽快なサウンドに身も心も軽くなるそうです。1995年にウルフルズがカバーした『大阪ストラット』は、コミカルでさらにテンポよく、これらの楽曲をBGMに写真集をめくってほしいとのこと。

写真集を眺めていくと、パンクスもギャルも警察官も僧侶もチンドン屋も路上生活者も、時には犬やカラスさえ、有元さんの被写体となっている人々や動物たちはポジティブなバイブスを放ち、写真を見る私たちにもまさしく「ハッピーでラッキー」な一瞬の表情が伝わってきます。

今回はUV印刷機で印刷を行いました。モノクロ面は濃いスミ(特殊仕様コンクスミ)と光沢グレーのダブルトーンにグロスニスを刷り、暗部が引き締まった光沢感のある仕上がりになっています。

シルバーの印刷面については、写真のネガ版を使用しましたが、白黒が逆転した通常のネガ版では白の面積が大きくなってしまうため、プリンティングディレクターが白黒のヒストグラム(面積率)を計算し、銀の面積を増やして、モノクロ面とのバランスを取っています。表紙の加工は、傷がつきにくいマットPP加工のJスクラッチが採用されました。

禅フォトギャラリーは7月8日から8月6日まで、有元伸也『Tokyo Strut』刊行記念展を開催。写真集『Tokyo Strut』の刊行を記念し、同シリーズより暗室で制作可能な最大サイズのモノクロプリント24点を一堂に配したインスタレーション展となります。また今回は、7月6日から25日まで日本橋高島屋S.C. 本館6階 美術画廊Xにて「有元伸也 Tokyo Circulation / Tokyo Strut」展を同時開催。

自分らしさ全開で都市を行き交う人々の姿をおさめ、眺める私たちをもハッピーにしてくれる写真集です。二つの写真展と合わせて、ぜひご覧ください。

ZEN FOTO GALLERY – アジア諸国の写真を専門に紹介するギャラリー・出版社

禅フォトギャラリーは7月8日から8月6日まで、有元伸也『Tokyo Strut』刊行記念展を開催いたします。 「Tokyo Circulation」(2016)、「TIBET」(2019)、「Tokyo Debugger」(2021)に続き、禅フォトギャラリーでは4回目となる今回の個展は、巨大な生態系としての都市に生きる人々の肖像を写し取った『Tokyo …

有元伸也 TOKYO CIRCULATION/TOKYO STRUT

有元伸也氏は、1971年に大阪に生まれ、1994年ビジュアルアーツ専門学校大阪を卒業。写真家として活動を始め、中国、インド、ネパールの国境に拡がるチベット文化圏を巡り、人物のポートレイトを撮り続けてきました。その成果として刊行された写真集『西藏より肖像』は初期の代表作として高い評価を受けます。本展は、東京に拠点を移し2006年より新宿を中心として10年に亘って撮り続けてきた写真集「TOKYO