藤原新也写真集 祈り

著:藤原新也

ブックデザイン:鈴木成一デザイン室
編集:中島ゆかり

発行:クレヴィス
発行日:2022/7/22

判型:A5横判(143×220mm)
頁数:304p
製版・印刷:プロセス4C、スミ、表紙、表紙、帯はマットニス、カバーはUVマットOPニス
用紙:b7ナチュラル、b7トラネクスト、b7クリーム、b7バルキー、アカシヤ、ゴールデンアロー 白、ヴァンヌーボV-FS スノーホワイト
製本:無線綴じPUR製本、箔押し

今回ご紹介するのは、写真家・藤原新也氏の新作写真集『祈り』です。

藤原新也氏は1944年福岡県門司市(現北九州市門司区)出身。東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻中退。1972年の処女作『印度放浪』はインド放浪記として大きな反響呼び、当時の学生運動の終息後、精神的支柱を失くした青年層のバイブル的な存在となりました。

1977年、『逍遙游記』で第3回木村伊兵衛写真賞。1981年発表の『全東洋街道』で第23回毎日芸術賞を受賞。1983年には『東京漂流』を発表します。

『東京漂流』と同じ1983年発表の『メメント・モリ』(ラテン語で「死を想え」の意)は、川のほとりで野焼きされる遺体や、「ニンゲンは犬に食われるほど自由だ」という有名な一文の付いた、打ち捨てられた死体が犬に食われている光景など、茫漠と「生」をおくる我々に絶対的な「死」を突き付け、改めて「生」と「死」について思いを巡らせる写真集でした。この写真集からも一部『祈り』にも収録されています。

今回の写真集『祈り』は、1969年インドから始まった50年の旅の道程と根底にある人々への思いを「祈り」というテーマに込め、初期作から最新作の作品と書き下ろしの文章で、その多彩な活動を辿るものです。

大震災直後には東北を歩き、香港・雨傘運動では現地からSNSでライブ配信、コロナ禍では無人となった街に立つ。殺伐とした現代を背に、藤原氏は私たちに「生きることと死ぬこと」の本質を問い続けています。これらの写真は表面的なヒューマニズムに陥ることなく、冷静な写真家の目で透過された光景として私たちに示されます。死生観を揺さぶられる本書、ぜひご一読ください。

担当プリンティングディレクターより

髙栁 昇

藤原新也先生は、私がプリンティングディレクターの駆け出しの頃からの大スターで憧れの存在でしたので、今回のお仕事は感慨深いものがあります。

藤原先生はご自分で画像の色調を調整されるほどなので、校正戻しの際のご指示が的確で速かったのが大変印象的でした。テスト校正をして全体的なイメージの確認をしていただき、先生の意図を汲みながら印刷ディレクションを行いました。明部のディテールを出し、全体的にシアン(藍)が強めがお好みでしたので、青味がかったイメージに製版、印刷いたしました。