ベニシアと正 2 ーー青春、インド、そして今ーー

著:ベニシア・スタンリー・スミス、梶山正

発行:風土社
発行日:2022/8/1

判型:B5縦変型判(257×190mm)
頁数:152p
製版・印刷:プロセス4C、スミ、特色2C(特緑ダブル)、カバーはマットPP加工
用紙:b7トラネクスト、OKエルカード+、AライトスタッフGA-FS
製本:あじろ綴じ並製本

今回ご紹介するのは、ベニシア・スタンリー・スミス、梶山正ご夫妻著『ベニシアと正 2 ——青春、インド、そして今ーー』です。

この本で青春期を書くことになり、僕は自分の青春期を初めて振り返ってみた。じつはベニシアは病気で目が見えなくなる前に、すでに自分の青春期をまとめていた。

彼女はイギリス貴族の娘で、自分のまわりの世界にいろいろな疑問を抱いていた。僕は九州生まれの普通の人。二人の共通点は「自分探し」のためにインドへ行ったことだけだと思う。年代はずれるが、インドを目指した若者の青春期が、ここにある。

—梶山正 (まえがきより)

前作『ベニシアと正、人生の秋に——正ありがとう。すべてありがとう』では、ハーブ研究家のベニシアさんと写真家の梶山正さんの出会い、京都大原で丹精込めた庭と日本家屋に暮らすお二人の生活にフォーカスしたものでした。

今作では、お二人の青春時代、インドで過ごしたそれぞれの日々、イギリス貴族のお嬢様と九州出身の普通の人という、出自も環境もまったく違うお二人が、日本で出会い結ばれ、終の棲家となる京都大原で暮らし、そしてベニシアさんが介護施設に入所するまでが記されています。

ベニシアさんはPCA(後部皮質萎縮症)を患い、2018年頃からは目も見えなくなっているそうです。精神障害と発達障害のあるベニシアさんの次女、和美さんも同居しはじめ、介護する正さんも大変な毎日を過ごされていますが、大好きな山に登ることで外の空気を吸うことができ、大変な介護生活のさなかでも心のゆとりを持つことができているようです。

時折、正さんのイライラが伝わってくる本音も見受けられ、大切な人の介護に向き合う大変さもひしひしと伝わってきます。

人生にはいろいろなことがある。
月のように満月のときもあれば、三日月のときも。
それにひとつひとつ対処していけば、いつかまた乗り越えられると信じています。

ーベニシア・スタンリー・スミス(本文9ページより)

お互いに出会うまで、様々な出会いと別れを経験し、最良のパートナーとして巡り合ったベニシアさんと正さん。人生の終盤にさしかかってきたお二人にも、老いや病は避けて通れません。しかし、介護施設に入所したベニシアさんのために自走式の車椅子を手に入れ、二人で散歩する時間を楽しんでおられます。

大切な人々とのかけがえのない時間のこと、その時間を過ごすために身の回りを気持ちよく整えることなど、慌ただしい日々の暮らしに忙殺されがちな私たち現代人が「豊かに暮らす」ために必要なヒントが本書にはちりばめられています。ベニシアさんの美しいイラストや、美しい庭のあるご自宅の写真なども見どころのひとつです。ぜひご一読ください。

担当プリンティングディレクターより

細野 仁

室内で撮影された写真は、人物の表情がわかるように、顔色を明るくかつ色浮きしないように調整しています。

お二人が若かりし日に撮影された60年代~70年代の写真については、当時のプリント見本がありましたので、そちらに合わせて印画紙の古びた感じや紙の焼け具合などもそのままにして、全体的に経年劣化した古くて懐かしい写真の雰囲気を残しました。

撮影:梶山正
翻訳:竹林正子、メイボン尚子
ブックデザイン:菊池尚枝
編集:内田珠己
協力:中森あかね