様式とかたちから建築を考える

著者:五十嵐太郎、菅野裕子

発行:平凡社
発行日:2022/6/15

判型:B6縦変型判(188×132mm)
頁数:312p
製版・印刷:プロセス4C、スミ、カバーはグロスニス
用紙:OK白王、ヴァンヌーボF-FS ホワイト、グムンドカラーマット-FS №21
製本:あじろ綴じ並製本

今回は、五十嵐太郎さん、菅野裕子さん著『様式とかたちから建築を考える』をご紹介いたします。

様式名で分類するだけでは、建築を十分に楽しめない。
様式とは何かを理解し、かたちが語るメッセージを読みとくこと。
そのために日本近代の様式建築と西洋の歴史建築を接続しながら、豊富な挿図・写真で詳説する。(本書帯紹介文より)

私自身、三菱一号館美術館や三越本店、日本橋髙島屋など、訪れたり目にしたりしたこともあるのですが、「なんだか立派な建物だな」といったぼんやり思って終わってしまっておりました。

しかしながら、この本を読み、建築様式とその意味するものを知ると、俄然興味深いものになります。

例えば、三越本店のメダイヨン(てっぺんの近くにある丸いフレーム)は、フランス語でメダルを意味し、外観、インテリア、家具で使われる円もしくは楕円のかたちの枠組で、その内側に何らかの装飾的なレリーフや絵画をおさめます。

これは古典主義建築のヴォキャブラリーのひとつで、三越本店のように、しばしば正面の中心軸の上部に使われ、視線を集める意匠上のアクセントとなるそうです。

三越本店のメダイヨンでさらに興味深いのは、メダイヨンの上から小さい柱が伸びて、三越の赤い旗をなびかせていること。さらにメダイヨンの中に大きな金色の漢字で「越」を入れていること。これらは西洋には見られない独自のデザインとのことです。同様に日本橋髙島屋もメダイヨン中央に「髙」の字が入れられています。

本書では、豊富な写真と図が具体例として明示されているため、建築について門外漢である私のような者にも非常にわかりやすく、そして興味深く読むことができました。街を散策するとき、ちょっとお出かけするとき、「これは何様式かな?」と気にしながら建築物を眺めるのも楽しいのではないでしょうか。ぜひご一読ください。

編集協力:今井章博、髙尾美由紀
装丁・DTP:岡本健+(岡本健、仙次織絵)
製本:大口製本印刷