中世から近世へシリーズ 毛利氏の御家騒動 折れた三本の矢

著:光成準治

装幀:大原大次郎

DTP:ダイワコムズ

発行:平凡社
発行日:2022/10/25

判型:四六判(188×128mm)
頁数:332p
製版・印刷:プロセスCMY+スーパーブラック、スーパーブラック、特色1C(特銀)+スミ、スミ、カバーはマットPP加工
用紙:淡クリーム琥珀N、雷鳥マットコートZ、雷鳥コートN、フロッシュホワイトカードW
製本:あじろ綴じ並製本

今回ご紹介するのは、光成準治氏著『中世から近世へシリーズ 毛利氏の御家騒動 折れた三本の矢』です。

毛利一族は結束していたのか? 輝元当主期における、嫡子秀就と養子秀元、吉川広家・広正らの関係から、一族の実態を明らかにする。

ー平凡社HP紹介文より

毛利氏と言えば、毛利元就が三人の子に矢を折らせたという「三本の矢」の逸話が有名ですが、近代日本においては「家」を守る家父長制維持のため為政者が利用してきました。そのため、毛利氏は元就の訓戒を守り、一族が結束した結果、対織田との戦や関ヶ原合戦などの危機を乗り越え、最終的に明治維新を実現する原動力となったというイメージが今なお根強くあります。

しかしこの逸話も、元就が子供たちの対立という目の前の問題だけでなく、戦国期に親子・兄弟・一族の争いが頻発していたことに対する元就の危機感から生まれたものだったようです。

毛利輝元が関ヶ原で西軍につき敗者となった後、大幅に減封されたものの家の存続は許されましたが、毛利家内部では生き残りをかけ熾烈な争いが繰り広げられます。本書では関ヶ原合戦の直前期から幕藩体制の確立期までの毛利一族の動向、とりわけ当主輝元とその後継者秀就のほか、江戸期には支藩を創出した秀元、就隆、吉川元春の後継者広家とその子広正に着目し、毛利一族の実像の一端に迫っています。

吉川広家や毛利秀元・就隆といった、新たな「三本の矢」ははたして本宗家を支えたのか。本書を読むことで、今まで私たちが思い浮かべてきた通俗的イメージは一新されるのではないでしょうか。

光成氏は、「為政者はしばしば自分たちに都合の良い虚構を作り出し、それを国民に信じ込ませることによって、権力の安定化を図ろうとする。三本の矢の逸話も、家父長を中心に家族を結束させて天皇に絶対服従する臣民を涵養(かんよう)するために利用されたと言ってよい。」と述べられています。「単なる過去の歴史でなく、現代社会にも警鐘を鳴らすもの」として、我々も毛利氏の歴史から学びたいと思います。ぜひご一読ください。

担当プリンティングディレクターより

細野 仁

カバーデザインの罫線と黒い平アミ部分との差がはっきりと出て際立つように、平アミが潰れる手前で微調整を繰り返し、徹底した濃度管理を行って印刷しました。

カバー、口絵の画像は明るくし、特に口絵の「関ヶ原戦陣図屏風右隻(部分)」については、実際の作品を再現するというよりも、白や赤を鮮やかにして綺麗な印象に仕上げています。