森山大道 記録№51 / DAIDO MORIYAMA RECORD №51

著:森山大道

制作:長澤章生
翻訳:アンドレアス・ステュルマン

発行:Akio Nagasawa Publishing
発行日:2022/7/7

判型:A4縦変型判(280×210mm)
頁数:104p
製版・印刷:特色2C(特スミ+特グレー)、表紙はグロスPP加工
用紙:ミューコートEX、NW(ノーバックW)
製本:あじろ綴じ並製本

今回ご紹介するのは、森山大道氏のライフワークとも言える私家版写真誌『記録 №51』です。

日本を代表する写真家・森山大道氏が、毎号撮り下ろした写真で構成されている、ファン垂涎の写真誌。今回のテーマは西新宿。

現在サンパウロの美術館でぼくの写真展が始まっている。そしてローマと北京の美術館でも展覧会の真中である。ぼくの写真が遠く離れたそれぞれの街の人々にどう見られているのかな?などと思いながら、たったいま、東京の西新宿ヨドバシカメラの街角に掛かった3メートル四方の、大きく真赤な女の唇を描いたエロティックな看板の撮影中なのだ。

クチビルフェチのぼくであれば、それはもう写すしかないわけで、その一枚を写したことでぼくの気持ちにはずみがついて、この後ぼくは西口ガード付近の飲み屋街と雑沓する幾多の人を写して「記録」誌51号は西新宿で一冊を決めた。

久しぶりに撮り歩く西口界隈、相も変わらぬスタンスですが果たしてどう見てもらえるものか?

ところで、ここのところぼくは、故・武田百合子さんが、かつて富士山麓の別荘で13年間に渡って書き記した「富士日記」を読む時間が多くなった。

作者が日々の具体を懇切に記せば記すほど、記された平面が読むものに立体として映り、有りがちな情緒や感傷が一切拭い去られていて、記した人の体温がどこかユーモラスにすら伝わってくる。そして記した人が待ち過した幾多の日常という名のしたたかな時間のディテールが、途方もない叙事そのものとして、どこか言葉を越えた柔軟性を持ってしまっている。

そのことはぼくに、写真というツールに在る、決定的な強靭さと柔軟さを改めて知らしめてくれた。(著者の武田百合子さんは、言うまでもなく作家の故・武田泰淳さんの奥さんであり、娘さんは写真家の武田花さんである。)

ー森山大道(本文より)

今回は西新宿を舞台に、「記録」された写真は、猥雑な街並みやビル群、コロナ禍を象徴するマスク姿の人々など、我々が新宿で普段目にする光景です。しかし、それらはカメラを「絶え間ない自己確認の手段」として持つ大道氏が、生理的、感覚的なものとして、一切の技術的制約にとらわれず自由にシャッターを切ったもので、大道氏の目でなければ写し撮ることができない瞬間でしょう。

近年ストリートフォトグラフィーの人気も高まり、アマチュア写真家の方々もSNSなどに多く投稿されていますが、ストリートフォトグラフィーは特に写真家の生理的感覚が如実に現れるジャンルだと思います。

その草分け的存在である大道氏の「記録」は、彼の写真家としての感覚を現在進行形で窺うことができる貴重な写真誌です。ぜひご覧ください。

担当プリンティングディレクターより

髙栁 昇

本文用紙は写真の美しさが映える白さと印刷グロス感を兼ね備えたミューコートEXを使用し、インキの速乾性の高いUV印刷機で印刷しています。

スミは濃い特殊仕様コンクスミ、グレーは大道氏の写真の印刷に合わせて、弊社が独自に配合した特に濃い「大道グレー」を使用し、階調表現を豊かに、暗部のスミの濃度を上げ濃密な印象に仕上げました。用紙の特性とUV印刷の相乗効果で、印刷面のグロス感も高まっています。

記録51号 – 森山大道 | AKIO NAGASAWA

1938年大阪生まれ。写真家・岩宮武二、細江英公のアシスタントを経て1964年に独立。写真雑誌などで作品を発表し続け、1967年「にっぽん劇場」で日本写真批評家協会新人賞受賞。1968-70年には写真同人誌『プロヴォーク』に参加、ハイコントラストや粗粒子画面の作風は”アレ・ブレ・ボケ”と形容され、写真界に衝撃を与える。 …