小松美羽 Transparent Chaos ー霊性とマンダラー

著:小松美羽

発行:求龍堂
発行日:2022/9/17

判型:A4縦変型判(297×225mm)
頁数:234p
製版・印刷:プロセス4C、特色2C(特金+特銀)+グロスニス、特色1C(特グレー)+スミ、スミ、カバー、帯はグロスPP加工
用紙:b7トラネクスト、ニューVマット、ブラックブラック、NTラシャ 濃赤
製本:無線綴じPUR製本

今回ご紹介するのは、現代アーティスト小松美羽氏の最新作品集『霊性とマンダラ―Transparent Chaos』です。

1984年、長野県に生まれた現代アーティスト小松美羽氏は、豊かな自然の中で生き物の生と死を身近に感じた経験から、独自の死生観を形作ってきました。神々の使いや神獣、人々の祈りといった「見えない何か」からインスピレーションを得たモチーフを描くようになります。

「アートは魂を癒す薬である」と考える小松氏にとって、作品制作は祈りと共にあり、「神事」。このような制作スタイルの小松美羽は、他に類を見ない唯一無二のアーティストと言えます。

本書は、これまでの画業を振り返る初の本格的な展覧会となった「小松美羽展 岡本太郎に挑む―霊性とマンダラ」(川崎市岡本太郎美術館、2022年6月25日~8月28日)の展覧会図録を書籍化したもので、小松氏の初期作品の銅版画をはじめ、ニューヨーク滞在を経て表現が飛躍した発展期の作品、そして開催年の2022年に制作された作品で構成。さらに展覧会の展示風景も収録し、作品のスケールや臨場感にも触れることができます。

この展覧会で限定公開された、真言宗立教開宗1200年を記念して奉納される《ネクストマンダラ─大調和》は、小松氏が描く現代の曼荼羅で、4メートル四方の二幅一対の巨大な曼荼羅。2023年に東寺真言宗総本山の教王護国寺に奉納され、奉納後は非公開になる為、本書でしか見ることができない貴重な作品です。

小松氏はこれまで、いろいろなものを組み合わせ、まとめあげてデザインする力のことを「大和力」と呼び、創作上のモチーフとしてきました。2021年に高野山で《NEXT MANDALA―魂の故郷》を制作してからは、今の時代に求められているのは大いなる調和の力なのだということを学び、「大加速」(グレートアクセラレーション)から「大調和」(グレートハーモニゼーション)へ、これがいまの小松美羽氏が絵を描くという役割の意味であり、制作の信条となっています。

異彩を放ち、エネルギー溢れる小松美羽の作品は、私たちの魂を揺り動かし、閉塞した現代社会を生き抜く力を与えてくれる。内から沸き立つような力を得られる見応え十分の作品集。ぜひご覧ください。

担当プリンティングディレクターより

細野 仁

岡本太郎美術館にお伺いし現物校正を行いました。小松美羽さんご本人立ち合いのもと、ご本人の意向もうかがいながら校正を進めました。

アクリル画については、シルバーやゴールドの色彩表現は部分的に製版上で調整しています。全体に彩度の高い作品が多いため濁り成分を抑え鮮やか目に表現していますが、絵柄自体が塗りと線の集合体なので画面によっては黒の線が密集していると
濁って見えてしまいがちなので、いかにクリアに鮮やかに見せるかの表現に苦心いたしました。

銅版画については、線の集合体なので印刷で見当ズレによるモアレが出てしまわないように、見当ズレに注意しながら印刷を試みました。

図録全体が小松美羽さんの力強い作画と世界観が余すところなく出ていると思いますので一度、手に取っていただけるとより強くお感じいただけるのではないかと思います。

企画・構成:飛鷹全法(高野山高祖院住職)
編集協力:高橋紀成(風土)、星原恩(風土)
協力:Whitestone Gallery、川崎市岡本太郎美術館
特別協力:真言宗総本山 東寺
執筆:土方明司(川崎市岡本太郎美術館館長)、安藤礼二(多摩美術大学教授)、鵜飼秀徳(京都・嵯峨正覚寺住職)、シネード・ヴィルバー(クリーブランド美術館学芸員)
写真撮影:田原桂一、永坂嘉光、東達也、加藤健
写真提供:Whitestone Gallery、株式会社風土
翻訳:トライベクトル株式会社
アートディレクション&デザイン:加藤賢策(LABORATORIES)
デザインアシスタント:望月滉大
編集:深谷路子(求龍堂)