亀山亮写真集 山熊田

著:亀山亮

発行:夕書房
発行日:2018/2/20

判型:B5縦変型判(247×186mm)
頁数:128p
製版・印刷:特スミ(スーパーブラック)+特グレー+超被膜グロスウェットニス、特スミ(スーパーブラック)、特スミ(スーパーブラック)+超被膜グロスウェットニス
用紙:b7トラネクスト、ヴァンヌーボVスノーホワイト
製本:オープンバックPUR製本、箔押し

今回ご紹介するのは、2018年刊行、写真家・亀山亮氏の写真集『山熊田』です。

新潟県村上市山熊田。新潟と山形の県境に位置するこの小さな集落にあるのは、山と熊と田だけだ。山焼きと熊狩り、そしてシナ織。これは山とともに生きる人々の暮らしの、現代の記録である。

ー亀山亮(写真集帯文より)

亀山亮氏は1976年、千葉県生まれ。日本写真芸術専門学校報道・写真芸術科卒業。15歳のときに三里塚闘争を続ける農家を取材したことを皮切りに活動を始めます。

1996年より先住民の権利獲得運動を行なうサパティスタ民族解放軍など中南米の紛争地の撮影を開始。2003年、パレスチナの写真集『INTIFADA』でさがみはら写真新人賞、コニカフォトプレミオ特別賞を受賞。コンゴ、リベリア、ブルンジなどアフリカ7カ国の紛争地に8年間通い続け、2012年『AFRIKA WAR JOURNAL』を発表。2013年、同作で第32回土門拳賞を受賞しました。

本書の舞台となる山熊田は、19家族48人が暮らす山深いマタギの集落。山熊田の人々は、冬は雪中に熊や野生動物を追い、それ以外の季節は焼き畑で野菜を育て田んぼで米を作り、清流で川魚を獲り、シナノキの樹皮でシナ織を織って暮らしています。厳しい環境の中、自然の恵みを最大限に活かした、地に根差した生活がそこにはあります。

写真集をご覧いただくと、山熊田の世界に入り込めるような「手触り感」をお感じいただけるのではないでしょうか。スマートフォン一つで自ら汗することなく便利な生活を送る私たちに比して、「自然の中へ奥深く入り込み、命のやり取りをしながら静かに自身と向き合う」山熊田の人々の方が、生きる歓びに満ちているようにさえ見えます。

生きるという行為、「生と死」をめぐる原初の生業とは何かを強烈に問いかけてくる写真集です。ぜひご覧ください。

担当プリンティングディレクターより

髙栁 昇

マタギの方々からの暮らしを伝えた写真からは、生々しい自然の温もりのようなものが伝わってくる写真集だと思いました。帯に「遠い昔から続けられてきた彼らの営為に、強い生と死の手触りを感じる」とあるように、山熊田の土地の「手触り感」がこの写真集最大の魅力だと感じます。

あえて人物を背景から浮き上がらせるような処理はせず、かろうじて表情がわかる程度に製版し、自然と一体となって暮らす人々を表現するよう努めました。

寄稿:山川徹、大滝ジュンコ
装幀:鈴木聖
翻訳:メリッサ・ジャニーニ、アマンダ・マクリントック

モノクロ写真集制作エピソード|亀山亮・石元泰博・森山大道・鬼海弘雄

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