茶飯事

著:頴川邦子

発行:平凡社
発行日:2014/1/24

判型:A4縦判(297×210mm)
頁数:160p
製版・印刷:プロセス4C、スミ、スミ+特色1C(特赤)、マットニス
用紙:b7ナチュラル((I)オペラホワイトゼウス)、アラベール スノーホワイト
製本:あじろ綴じ並製本

今回ご紹介するのは、2014年刊行、著・頴川邦子さん、写真・泊昭雄さんの『茶飯事』です。日本の美しい四季や、海外の旅を舞台とした、女性料理研究家による伝統とモダンを融合させた茶事・茶会の数々を掲載。瑞々しい写真を通じて、現代の茶と食とおもてなしのあり方を提示しています。

(前略)日本の文化も生活も食事も、繊細で緻密で、素朴で大らか。世界に誇るべきものです。格調はあるけれど、自然で気取らない、親しみやすい深いものであることを、特に日本の若い方々に知っていただけたらと思います。

ー本文 4ページより

来客をもてなすために気持ちよく設えられた茶室や庭。四季折々の花々や掛軸でととのえられた床の間。茶室の外側にきちんと揃えられたたくさんの草履。器にまで趣向を凝らした美味しそうな料理の数々…どれもこれも、日本人の美意識に根差した美しいものです。

一方、クリスマスと茶会を融合するなど、新しいものも取り入れていく大らかさ、柔軟さも、日本の文化の良い面と言えるでしょう。頴川さんはその大らかさと繊細さで、パリやスイスでも親しい友人たちを呼んで、場をととのえ現地の美味しいものと和食でおもてなしをしています。また、全体的に藍味を帯びた泊さんの写真により、いっそうその空間は世俗を忘れられる落ち着いた印象となっています。

頴川さんは、ご主人が突然事故で亡くなり絶望したこともあったそうですが、当時16歳の娘さんから「いくら泣いてもお父さんは帰ってこないのだから前を向いて歩かないと…」と言われ目が覚め、それからはずっと目の前に夢と希望をぶら下げて歩いています、と語られています。「目の前に夢と希望をぶら下げて歩く」とは、実に素敵な言葉です。

頴川さんのように、四季の移り変わりに感動でき、知人友人の心遣いに心が温かくなる…体力の衰えは仕方がないとしても、情緒面を豊かに年を重ねていければ、「年をとる」こともそれほど悪くなさそうです。そして、その繊細で緻密で、素朴で大らかな日本のおもてなしの文化を、若い世代の方々にも受け継いでいってもらえればと願います。ぜひご覧ください。

担当プリンティングディレクターより

細野 仁

写真家の泊さんからプリント見本があり、全体的にシアン(藍)が強い傾向でしたので、その色調を忠実に再現できるよう製版いたしました。料理や人物の写真なども通常の「あたたかみ」を出す方向ではなく、クールなトーンに調整して作品全体の脱俗感を強調しています。

暗部のディテールをだすためにインキをしっかり盛り込んでいますので、表面保護のためマットニスを絵柄に施しています。

アートディレクション:緒方慎一郎
デザイン:SIMPLICITY 岩橋謙
編集:菅付雅信
写真:泊昭雄
テキスト協力:阿久根佐和子、佐々木ケイ、管梓